転院後の再検査

この頃のマウさんのご様子

食欲不振は悪化。体重は4.1㎏。
シリンジでの強制給餌に切り替えていますが限界も見えていました。
首を大きく振って嫌がり、餌も半分以上口からこぼしてしまう状態でした。
なお、シリンジは15ml~20ml程度のものがやりやすいと思います(強制給餌の場合)。

多飲多尿はなくなり、ウリエースBTでの尿糖結果も陰性になっていましたが、尿たんぱくは陽性(++)のままでした。
また、このあたりからマウさんは熟睡しなくなりました。
いつも薄目を開いて、近付くと起きたため、痛みや違和感で眠ることができなかったのではないかと思っています。

いつもの寝床 下僕の足元です

H動物病院での検査

翌1月27日、前回(18日)よりインスリンを止めた旨を伝え、再度受診しました。
H動物病院にてエコー検査を行ったところ、若干の腹水が確認されました。腹水の採取もしてもらいましたが、色は透明だったと思います。
また、胃~膵臓付近に怪しい影があるので、血液検査と共に膵炎の除外検査を行いたいとのことでした。

K動物病院でも伝えていましたが、マウさんは基本嘔吐や下痢が今のところ確認できていません。
呼吸数も40回/分前後で特に食欲廃絶に近い食欲不振以外は問題がありませんでした。
食欲断絶が腫瘍によるものだとすると…嫌な汗が出たのを覚えています。

ちなみに今回の血液検査で、脂肪肝や低カリウムによる食欲不振も除外されましたが、マウさんは既にそんなレベルでは済まない状況へと変わっていました。

外注の検査結果待ちとなり、少し絶望しながら帰宅しました...

試験開腹手術

2月1日。
検査結果、「猫膵特異的リパーゼ(Spec fPL)」も正常範囲内だったため、膵炎の可能性は除外されました。
しかしながら、血液検査では貧血が確認され、白血球(リンパ球)の数値は低いまま。
マウさんはこのあたりで水すらあまり飲めなくなっていました。

胃や膵臓付近の怪しい影(塊?)が気になる先生は、開腹手術を提案してきました。
少し躊躇しましたが「体力が残っている内に」「まだ強制でも栄養が取れている内に」と思い、手術での確認を依頼し、問題が確認できれば同時に腫瘍?を取り除いてくれる!とのお話だったので期待しながらマウさんを残して帰宅しました。

手術の結果報告はその日の午後に電話で入りました。

  • 胃や小腸などを見た限り、異常は見当たらない。
  • 胃のリンパ節付近に癒着した組織があり、これは除去できない。
  • 細胞採取の上、病理医に回す。

ある程度予想はしていました…リンパ腫の可能性は。
猫のリンパ腫は悪性で、抗がん剤の治療を行っても予後はあまりよくありません。
また、治療費もそれなりに高額になり、今の自分の家計では厳しい状況ではありました。
しかし、逡巡する私を見越したように母が「治療費は心配しなくていいから助けてあげなさい」と言葉をかけてくれました。
この日の言葉は大変感謝しております。ありがとう、母さん。

 

病理検査の結果

この頃のマウさんのご様子

食欲不振は廃絶レベルになっていました。
自力ではもはや食事をとることがなく、スープ状の餌も興味を示さなくなりました。
不思議と、餌を床に置かずに顔の高さまで上げると少し舐めることがありました。
飲み水も器に少し顔を近付け、距離感がないのか感覚がないのか、いったん鼻や顎を近付けて、顎を濡らしてなんとか飲むことができる状態。普段の舌でのすくい飲みが出来ない状態になっていました。
行動はかなり少なくなり、普段の寝床(下僕のベッド)に乗り移る体力がないのか、床の猫用ベッドで過ごすことが多くなりました。
鳴くこともほぼなくなり、動物病院に連れていくときさえ、不安そうにか細く呼気を荒くするだけでした。
また、いつもは気持ちよさそうにする顎の下や耳の根本、額などを撫でても嫌がるようになっていました。

マウさん専用ベッドと不機嫌なマウさん

病理検査の結果

開腹手術の翌日、マウさんを迎えに行き、お薬を貰って帰宅しました。
お腹は大きく開かれ、痛々しい限りですが、気にする様子もないのか気にするだけの体力がないのか、エリザベスカラーは不要な状態でした。

お腹が大きく切り開かれています

ただ、貰った錠剤を上手く飲ませることができないので、毎日30分ほど格闘していました。
通常、猫は両顎の付け根あたりを押さえて上を向かせると少し口が開くのですが、マウさんは体力がないこの状態でも首をブンブン振りながら口を閉じ続けました。
ここ最近の強制給餌もストレスになっていたのだと思います。

この間、猫のリンパ腫について色々調べ、明るくはない情報にかなり気分は沈んでいました。

リンパ腫は大まかに「低分化型」「高分化型」があり、細胞分化が低い低分化型が「高悪性」、分化が済んでいる高分化型が「低悪性」となっていました。
高分化であれば抗がん剤は効きにくいようですが増殖しにくいので予後が期待できます。
低分化では抗がん剤が効いても増殖が速いので再発リスクが高いようです。

せめて「高分化型」であってほしい…そう願っていました。
しかし、結果は想定の斜め上でした。

上皮細胞由来の未分化癌

約1週間後に出た結果がそれでした。
未分化癌は分化前の細胞のため、増殖スピードが低分化の比ではありません。
もっとも予後が悪い癌でした。

抗がん剤治療に希望を

この頃のマウさんのご様子

前回とほぼ変わらず...ただ、シリンジでの給餌は下僕およびマウさんにとってもストレスになっていました。
元気がなくなっても、強制給餌だけはひたすらに拒み続けていました。
摂取カロリーは日増しに少なくなっていた時期だと思います。

うたた寝中...に見えますが半目開いたまま

未分化癌との闘い

2月9日。鳴かず、静かになったマウさんを連れてH動物病院へ。
癌の結果はタブレットを見ながらの口頭説明でしたが、上皮細胞由来の未分化癌。このため原発(発生源)は不明とのことでした。
また、血液検査の結果「がん悪液質」の発症が疑われるため栄養補給(特にたんぱく質)も必要な状態に陥っていました。

貧血が酷くなり、他の異常値も出始めている


先生曰く「副腎あたりに腫瘍があるかもしれません」とのことでしたが、もう手術に耐えられる体力が残っているとは思えませんでした。
同じく体力の不安がありましたが「プラチナ製剤」ないし「分子標的薬」などでの抗がん剤治療を提案されました。

下僕は長年マウさんと連れ添い、家族同然の生活をしてきました。
ここでマウさんを失うことは考えられず、比較的マウさんの負担が少ない(通院などが少ない)「プラチナ製剤:カルボプラチン」の投薬をお願いしました。
点滴での投薬となったため、マウさんを半日預け、それと合わせて栄養補給のために「経鼻チューブ」(鼻カテーテル)の設置を依頼しました。

 

 

経鼻チューブでの給餌

経鼻チューブ留置

抗がん剤投与の夜。マウさんを迎えにいきました。
投薬は完了し、次回は3週間後ですが、状態確認のために1週間後に再度通院することに。

カテーテル 結構細いです(5Fr?)

経鼻チューブは胃か食道に設置したチューブの端に、流動食を流し込むことができます。
誤嚥性肺炎のリスクがあるため、事前に少量の水を流してむせたりしないか、チューブが陰圧になっているかをチェックするのが一般的です。

  1. 事前にチューブへ2ml程度の水を流し込む(※)
    ※シリンジを少し引いて空気が抵抗なく吸い込めてしまうようであればNG(=先端が気道にある)というチェックもあるようです
  2. 猫がむせなければ先端は食道に留置されているので流動食を流す
  3. 流動食を流し終えたら洗浄のために水を再度流し込む
  4. 逆流しないように空気を多少流し込んで蓋をする

注意点は流し込める流動食はほぼスープ状のものだけです。
少しでも塊があれば容易にチューブ入り口で詰まり、シリンジを押し込んだ瞬間に暴発します。
少なくともムース状のご飯を水に溶いた程度ではダメでした。
また、水と流動食も冷たいと胃に負担がかかるため、適度に温めてあげると良いと思います。

「ロイヤルカナン クリティカルリキッド」が定番なようですが、お高いので「デビフ カロリーエースプラス 猫用流動食」を今回使用しました。

www.dbfpet.co.jp

また、猫のサイズにもよるみたいですが、流し込める量も注意が必要です。
マウさんはこの時点で4㎏ほどでしたが、だいたい25ml前後が1回の食事量となるようです。
10ml程度のシリンジにスープを吸い込み、ゆっくりと流し込んでいきます(自分は数秒で1mlずつくらい)。
胃の内容物はスープ状のものであれば2~3時間で胃から無くなるようです。

経鼻チューブは後頭部にテープで仮止め

また、流し込むときの猫さんの様子も注意が必要です。
食道に直接入るため、猫さんは給餌中はあまり反応しません。
流し込んでいる途中でえずく場合は、流動食が食道上部に逆流しかけている可能性があるためいったん手を止め、時間を少しおいてから再開してください。
特に弱っている猫は嘔吐する力も弱っています。弱っているのです。

また、経鼻チューブは細いため、口からの食事も可能なようです。
今回もたんぱく質摂取のため、始めはマウさんにも何度かシリンジ給餌を併行してみましたが、やはりストレスが高そうでしたので、最後は経鼻チューブのみの食事に切り替えました。

 

最期の6日間

2月10日

カテーテル留置後の翌日。
給餌が大分楽になったため、摂取カロリーの増加を目指すことに。
カロリーエース+は90kcal/100gで1缶85gのため、1缶を飲ませ、残りはシリンジで高たんぱくのムース状の餌を食べてもらうことにしました。

ムース状の餌は1/3くらいこぼしてしまいましたが摂取カロリーとしては100kcalを超えたため一安心。だんだん増やしていきたいと思いました(結果的にはシリンジ給餌はこの数日後に中止)。

マウさんは今日も寝床や床に座って気だるげに過ごしていました。
なお、抗がん剤かカロリーエースのせいか、うんちが黄土色の軟便状になってました。

上空写真 痩せているが腹水のためお腹周りが膨らんでいる

2月11日

今日もあまり変わらず。気だるげ。
相変わらず薄目を開けて中空を睨んでいました。痛みで寝れないのか、痛み止めを貰ってくればよかったかと少し後悔しました。
また、この日の夜は寒かったのか、久々に布団の中に潜り込みに来てくれました。
これが、最後だとわかっていたら...

経鼻チューブに引っ張られててちょっと辛そう

2月12日

経鼻チューブの給餌後、マウさんが少しムセました。
幸い、その後の陰圧チェックや水の流し込みでは問題がなかったのでチューブ先端が戻ったり、気道に入ったことはなさそうです。

また、マウさん用ベッドに入らず、クッションや床で香箱座りをすることが多くなり始めました。
これは後で知りましたが、自身の体温が低くなったため、暖かい場所を避け始めた影響のようでした。
また、歩き方も力がなく、少し歩いては止まり、また歩き出して...とフラフラな状態。
うんちも黄土色のままでしたが、少し固形化していたため、少し安心しました。


しかし、マウさんの体力は急速に、確実に奪われていったのです。

暫定ベッドのクッション

2月13日

今日は風もなく、よく晴れた日でした。
下僕はマウさんをよく家の前で(監視付きで)散歩させていたのですが、体調から考えると回復しない限りはもう機会がないと考え、抱っこして少しお散歩に。


周りの景色を下僕の肩越しに一望させた後、そっと地面に降ろしてあげました。
いつもはアスファルト横の草木に興味を示して匂いを嗅ぐマウさんでしたが、やはり動くだけの元気もないのか、そのまま座り込んでしまいました。
静かに抱き上げて自宅に帰りました。
マウさんは好きだった外の景色をしっかり見ることができたんでしょうか。


また、ここ数日おしっこが出ていないことに気付きました。
身体が浮腫んでいる気もするため、早めに病院に連れていく必要があるようです。

帰宅 お疲れのご様子

2月14日

この日、マウさんの様子が大分おかしくなっていました。
瞳孔が暗めな部屋でも開いたままになり、眼が大分虚ろです。
足腰が立たず、立ち上がりの時などに酷くよろけるようになりました。
首に力が入らないのか、重たそうに頭がうなだれていました。
ただ、呼吸方法や呼吸回数(40前後)に異常は見られませんでした。

経鼻からの給餌もよく逃げるようになり、少し苦しそうでした。
流動食を飲ませたあとに口をクチャクチャとしていました(後で重要)。
また、ようやくおしっこも出ましたが、トイレではできずに失禁しました。
その後、下僕のベッド下に隠れて出てこなくなりました。

この日はH動物病院は定休日なので、明日早めに連れていく必要がありました。

2月15日

前日から症状は変わらず。
ずっと目を開けたまま、うなだれて中空をぼんやり見つめていました。
もう何日ちゃんと眠っていないのだろうか。痛み(?)だけでもなんとかならないかと
そんな思いのまま、H動物病院へ向かいました。
なお、鳴こうとしていたのか別の異音だったのか、耳を澄ますと小さくキューキューと鳴いていました。

最後の写真 力なくうなだれ苦しそうな状態でした

H動物病院ではまず体重チェックを行いました。
体重は若干増えていましたが、今思えば単に浮腫と腹水のせいだったと思います。
経鼻チューブからの給餌に口を動かすような仕草をすることから、チューブの挿管に問題がないか、肺に問題がないかも確認をお願いしました。
当然、咳き込みもなく、肺付近の打診も問題がなかったため、チューブの問題は除外されました。


しかし、マウさんの生命維持に必要な体力は既に限界に達していました。
それでも現実を見ない愚かな下僕は、このとき先生に鎮痛剤を希望しました。
痛みさえ緩和できれば、十分に眠り、体力回復の一因となるはずだ、と。

 

違ったのです
このとき、緩和治療への覚悟を決めるべきだったのです

 

明らかにマウさんの命は消えかけていました。
「もう...身体は持ちませんか」との問いとその返答が怖かったのです。
万一の奇跡に縋ってしまいました。

この時、私はマウさんの延命を諦めるべきだったのでしょう。
苦痛を取り除き、残り数日間だとしても静かな最期を送らせるべきだったのでしょう。
その結果、惨い最期を迎えてしまいました。

下僕の罪

最期の栄養チューブ

病院から帰宅後、朝ごはんを抜いていたので貰った鎮痛薬(オンシオール)と共に流動食をマウさんに与えました。
やはり、流し込まれるのが苦痛なのか、少し流すと逃げるように立ち上がりましたが、軽く撫でであげると諦めたのかゆっくり座りました。
また、ある程度流すと気になるのか、口をクチャクチャと動かしていました。

 

その後は少し眼を細めて、横たわっていましたが、痛み止めが効いたのか、効かなかったのかは結局わかりません。
軽く撫でてみましたがやはり痛みで辛いのか、眼を細めたままマウさんは動きませんでした。

 

その日の夕方、2度目の流動食です。
いつも通り、7ml前後を少しずつ流し込みます。
マウさんはもう足腰がたたないようで、うまく座ることも出来なくなっていました。
また、頭を支えることも辛いのか、すぐにうなだれてしまうため、首を少し持ち上げてから少しずつ流し込んでいきました。

違和感があるのか、苦しいのか、何度もよたよたと逃げようとしました。
下僕は「食べて栄養をつけないと癌に勝てないよ」といつものように言い聞かせながらご飯を流し込みました。

最後のシリンジを流し込むと、また口をクチャクチャと動かしていました。
落ち着いてから、水5mlと空気をそれぞれチューブへ流し込みました。

 

マウさんの最期

給餌後、すぐにマウさんが力なく横に倒れこみました。
前足で力なく中空を何度も掻いています。明らかにいつもの動きではありません。
マウさんに声をかけながら軽く揺すりました。
すぐに「ガッ」という呼気の音と共にマウさんが大きく仰け反りました。

流動食が気管に入ってしまった!?

急ぎ身体を起こし、呼びかけながら何度も背中をさすりました。
しかし、飲ませた液体を吐き出す様子もなく、苦しそうに前足を掻き、再度大きく仰け反りました。
そして、パタっと動きが止まりました。

すぐに身体に耳を当てると、心音がゆっくりと小さくなり…すぐに消えていきました。
この時、取り乱した下僕はマウさんの身体を逆さにし、何とか吐き出させようと揺さぶりました。
当然、吐く様子もなく、呼吸は戻りません。
何度も心臓付近や肺付近を押し、揺さぶりながらマウさんの名前を呼びました。

 

5分ほど経ち...マウさんの命が失われたこと、いえ…奪ってしまったことに気付きました。


私はその後マウさんが生き返るわけでもないのに、先生に「本当に経鼻チューブに問題はなかったのか」と怒りの連絡もしてしまいました。
当然、挿管自体に問題はなかったはずです。
あれば、始めの流動食を流した時点で肺に入っています。
下僕はマウさんの命を奪ってしまったことを認められなかったのです。

 

茫然としながら、静かに横たわったマウさんの口を覗き込みました。
あれほど頑なに閉じていた口がすんなり開きました。
喉の奥に流し込んだ黄土色の流動食が見えました。

食べ物が食道から胃に流れ込まず、逆流してしまったように見えました。
今にして思えば、口をクチャクチャとしていた動きも、逆流した流動食を再度飲み込もうとしていた動きだったのかもしれません。

マウさんはもともと毛玉などをあまり吐かない猫でした。
嘔吐が苦手で吐きたくても吐きにくい体質だったのかもしれません。
癌で筋力が衰え、飲み込む力も吐き出す力もなかったのかもしれません。
ただ、それがわかったところで何も変わりません。

 

ごめんなさい
下僕はマウさんを殺してしまいました
ごめんなさい
下僕はマウさんを殺してしまいました
ごめんなさい
下僕はマウさんを殺してしまいました

 

だらりと力が抜けたマウさんを抱き、泣き喚きました。
マウさんの身体はまだほんのり温かく、滑らかな自慢の毛並みは全く損なわれていません。
ただ、眼の輝きと小さな命がたしかに失われていました。

一通り泣き喚いたあと、マウさんを2Fから降ろし、1Fの母に報告しました。
母も泣き、悲しみました。

 

 

酷いことをしてしまった
苦しい治療をさせて、最期まで苦しませてしまった

 

失った哀しみは時間が癒してくれるはずです
ただ、この罪の意識は消えるのでしょうか
マウさんは許してくれるのでしょうか
自分自身を許せるのでしょうか

 

この問いはまだ続いています。

 

ありがとうさようならマウさん

マウさんとの別れ

その後、淡々とマウさんの送り出しを行いました。
マウさんの火葬は迷いましたが、未練が残るということもあり、お骨などは残さない市の火葬に依頼をしました。
マウさんの好きだったカリカリ、遊び道具、最後に使っていたクッションやブランケットなどを入れ、お花で飾りました。
箱の中のマウさんは綺麗な毛並みのままで、今まで全く眠れなかった反動で深く静かに眠っているだけのようでした。
何度も何度も頭を撫でて「ごめんなさい」「ありがとう」「ゆっくり休んでね」と声をかけました。

今までありがとう

マウさんとのお別れ。
火葬場の職員さんにマウさんを引き渡し、去っていく職員さんとマウさんを見送りました。
見送りの際、自然と「行かないで」「行かないで」「行かないでマウさん」と嗚咽と共に声が出ました。
大の大人が、です。
哀しみがこんなに大きいとは知りませんでした。

職員さんとマウさんの姿が消え、しばらく車の中で泣きました。
しばらく後、「さようならマウさん」と呟いて火葬場を後にしました。

もしも、はない

マウさんとの別れは最悪の形でやってきました。
守るべき飼い主が、下僕が、ペットに引導を渡してしまったのです。

最期の日まで嫌な病院に通い、無理やり給餌をさせられ、それが元で亡くなってしまいました。
恐らくは、もともと余命僅かではあったでしょう。
それでも、この最期は残酷です。マウさんにとっても、下僕にとっても...

 

もし、始めの通院先を変えていれば?
もし、糖尿病のコントロールが上手くできていれば?
もし、早めに転院をしていれば?
もし、早めに緩和治療を望んでいれば?
もし、もし...

 

何も解決しないことはわかっています。
家族や知り合いは「それでも愛されて幸せだったと思うよ」と言います。
愛されたうえで最期に裏切られたマウさんは本当に幸せだったのでしょうか。
もう、下僕にもわかりません。返事をしてくれるマウさんはもういません。


しかし、泣いてばかりもいられません。
マウさんが亡くなった後、「虹の橋」の話を再確認しました。
マウさんは待たずに自分だけでも虹の橋を渡って幸せに暮らしてほしかったのですが、「雨降り地区」という話もあったようです。
飼い主が悲しんでばかりいるとその涙が降り注ぐ冷たい「雨降り地区」からペットは出ていけないというお話でした。
当然ただのお話です。虹の橋もただのお話です。


それでも、万一でもマウさんを再度苦しめることになるなら前を向かざる得ません。
今はマウさんの魂が安らかに過ごせることを祈るばかりです。

 

ありがとう さようなら マウさん いままでたのしかったよ

向こうでも元気でね

おわりに

ここまで素人のだらだらとした雑記をご覧いただき、ありがとうございました。
自身の気持ちの整理のため、愛猫との思い出を風化させないため、同じような飼い主様の判断の一助になれば、と思い、このブログをしたためました。

しかし、やはり治療の判断、引き際の判断などの後悔は残っています。


あなたのペットの終末に必要なのは、苦しくても闘って勝ち取る生きる時間でしょうか? 
短くとも静かで穏やかな余生でしょうか?
たぶん両方とも間違っていないと思います。
ただ、どちらも「結果が望んだものにはならない」可能性があるだけです。

であるならば、過程を大事にしてあげてください。
最期が幸せであれ、不幸であれ、それまでの幸福の総量が大きければ、ペットは幸せだったと思います。
私とマウさんは、最後の1か月に治療ばかりで互いに消耗していました。
必要だったのは静かに別れを準備する時間だったはずです。

ペットと、家族と共に過ごす時間を大切にしてあげてください。
悔いのないように引き際を誤らないでください。

 

これにてマウさんと下僕の闘病日誌は終話となります。
飼い主様とその愛されるペットたちに幸運があらんことを。
ありがとうございました。

下僕)S.K